第1章 運命の神
全てが白かった。
見渡す限り、全て白。
なにもない、白いただの空間。
そんな真っ白な世界で、ただふわふわと流されるだけだったわたしに、誰かが声をかけた。
「ゆかりさーん。ちょっと選んでほしいんだけどー」
声のした方に顔を向けると、
「誰?」
何とも親しみやすい笑顔を浮かべる人がいた。
・・・何で名前、知ってんの?こんな知り合いいたっけ?
髪も瞳も白くって、服装まで白い。こんなやついたら覚えてると思うけど。
「ぼく?ぼくは運命の神ー。名前はフェイトー。」
ふぇいと?って、fate?
「そうだよー、よくわかったねー」
手をぱちぱちと鳴らして言う彼は、わたしを馬鹿にしているとしか思えない。
しかもfateって“不幸な運命”って意味じゃなかったっけ?
ひどい名前だなぁ。かわいそうに。
「かわいそうじゃないしー。」
はぁ、そうかい。
・・・というか、そもそもわたしはどうやって会話しているんだ?
声に出していないはずなのに答えが返ってくるなんて。
「それはー、よくわかんないなー。ぼくにはゆかりさんの声が聞こえるんだよねー」
ふーん。ま、めんどいからもういいよ。
「あはは、資料にある通りあっさりしててめんどくさがりだねー」
ま、いいけど、といい運命の神フェイトは笑った。
・・・資料って何だ?