第44章 急転
「…………みわ?」
「……………………みわ」
瞼が重い。
なんとか目をうっすらと開けると涼太がいて、安心する。
私、どうしたんだっけ。寝てた?
違う。
そうだ、涼太が変な女に……
「りょうた、あぶない」
あれ、うまく喋れない。
声が出にくい。
「大丈夫、もう……大丈夫っス」
涼太が泣いてる。
どうしたの? 何かされた?
言葉が紡げない。
口がうまく動かない。
「りょ、た、なかな、いで」
「みわ、あまり喋らないで。救急車、すぐ……来るから」
救急車……ああ、そうか。
私、刺された、ってことか。
良かった。涼太が無事で。
「だい、じょぶ
わたし せいめいせん ながい、から」
「……痛い?」
痛みは……不思議と、ない。
どこを刺されたんだろう。
なんだか、背中が熱い。
目の前がぼやける。
「ううん……あつい だけ」
「ごめん。ごめんね。みわ」
なんで謝るの?
間に合って、安心してるんだよ、私。
「……ほら、わたし、いざってとき、には、ぴゅーって、はや、かった、でしょ?」
涼太が涙を流しながら微笑んでいる。
泣かなくていいのに。
「おみ まいとか こなく ていい……から、べんきょ して ばすけ して
ういん た
かっ ぷ 」
「……うん、分かってる。分かってるから。みわ、そんなに喋らないで……」
涼太、そんなに泣いたら
明日には目が腫れちゃうよ?
でも、涙に濡れた瞳が、キレイ。
ずっと一緒にいたいな。
「……て、にぎって ほし い」
ずっと、側にいて。
「……ずっと握ってるっスよ、ほら」
何故か温かさを感じる事は出来ないけど、私と涼太の指が絡まり、握られているのを見て満足だ。
こころがぽかぽかと、あったかくなる。
好き。
「りょ う た だいす、 き」
「みわ、愛してる」
涼太の温かい声が聞こえて
そこからは何も聞こえなくなって
目の前が
真っ暗に
なった。