第76章 清新
ベッドが軋む音。
シーツの擦れる乾いた音。
大好きなひとの甘い声。
他に、何も聞こえない。
ぐちゅぐちゅとはしたなく鳴る水音ですら、どこか別世界のもののように、遠くに聞こえている。
「あ……ッん、あぁ」
「ここ弄ると、溢れてくるっスね……わかる?」
「んゃ、あっ」
ナカの敏感な部分を刺激されると……お尻の方にまで愛液が垂れて来るのを感じる。
胸の先端を指で弾かれながら、口で陰核を吸われ、埋め込まれた指で擦られて……。
「あァ……、ッ、ひっ、んぁ」
その器用な動きに、私はただただ悶え喘ぐしか出来ない。
助けを求めて空を泳ぐ手は音も無く彼の手に捕まり、指先を絡め合ったまま、シーツの波へと呑み込まれる。
目の前が霞むほどの強い刺激に、身を任せるしかなくなっていた。
きもち、いい。
お腹の奥の方から、くる。
快感の波が押し寄せてくる。
きもち、よすぎて。
こわい……
「みわ、ナカ……ヒクヒクしてきたっスね……イキそ?」
涼太の双眸が、微笑みで形を変えていく。
「あ……ん、涼、太……!」
意識が、ふわんと浮遊し始める。
自分の身体なのに、指1本すら自分の感覚では動かせない。
いつも、どうしてたっけ。
このまま、どうなっちゃうんだっけ。
具現化して、背中にピッタリとくっついているような不安な気持ち。
「ん、アアッ……や、やだ! 涼太! まって! まって!」
再び宙を掻く手を、強く握られて。
「……怖い? みわ」
その心配そうな声から、翳る琥珀色の瞳から、誤解を与えてしまった事を知る。
「あっ、ちが……う、の、こん、こんなに気持ち良くなったら、どろどろに溶けて、いなくなっちゃうかも……」
必死に今の状況を話したのに、涼太はあったかい笑みを浮かべて……いや、笑いを噛み殺しながら言った。
「良かった。怖いとか痛いとかじゃないんスね。安心したっスわ……」
「っちょ、まっ、あ……!」
再び動かされた指で、呆気なく絶頂へと翔ばされ、抗議する意欲すら痺れて溶け出ていった。