第4章 人と人ならざるもの、弐
「姫島さん!」
シャドウは慌ててアスミへと駆けよる。追ってきたひよりと花音が、シャドウの腕で青ざめているアスミを見て、息をのんだ。
「早く中へ」
シャドウはアスミを抱きかかえ、家の中へと駆けこむ。リビングにアスミを横たわらせた時、ドン、という低い音が響いた。
「森の方からです。柘榴さんが!」
ひよりが心配そうにアスミの横に座る。
シャドウはアスミと玄関の方を交互に見ていたが、立ちあがり、ひよりに「姫島さんを頼みます」とだけ言い、外へと出ていった。
残されたひよりと花音。
弱々しい息のアスミに、ひよりは困ったように小さく呟いた。
「私は回復の魔法が使えないんです……。どうしましょう……」
「う……で、でもこのままじゃ……!」
「瘴気避けのお守りがあればいいのですが……。まともに瘴気を受けて、アスミ様は非常に弱っていますので……」
「お守り……?」
花音はじっと考える。何か記憶に引っかかる。あれは、そうだ。先ほど、裏庭でアスミが花音に見せてくれた青いブレスレッド。
それが、今アスミの腕にはついていない。
もしかすると、あれが瘴気避けなのでは。
そう思い出した花音は、勢いよくその場から飛び出していた。
▼◇▲
柘榴は、洞穴から飛び出してくる魑魅魍魎を次々と倒していきながら、ギチと歯を鳴らした。
『物の怪』の瘴気から生み出された『悪鬼』。
一体一体は、弱いがその数が半端ない。現に先ほど、一体だけ逃してしまった。
ひよりに危険がなければいいのだが。
そんなことを思いながら、またもう一体ねじ伏せる。
「柘榴さん!」
少年の声とともに、柘榴の視界が白い光に覆われる。
元の闇へと元に戻った時、数十体の『悪鬼』が地面に伏せ倒れていた。
銀髪の少年が青ざめた顔で柘榴のもとへと駆けよる。
「大丈夫ですか?」
「別にてめぇの助けなんざいらねえって」
「でも、あなたは封印できないでしょう?」
「…………」
沈黙する柘榴に、シャドウは事情を報告する。
「先ほど、一体の『悪鬼』が姫島さんを襲いました。『悪鬼』の方は、私が始末しておきました。他の方は無事です」
「ひよりが無事なら何よりだ」