第4章 人と人ならざるもの、弐
自分とは違う少女の姿から、アスミは目を逸らす。なんだか、自分が嫌だった。
「あのね、私ね、愛っていう親友がいるんだ」
突然話し始めた花音。
愛という少女の事をアスミは知らない。
だが、花音の生前の親友であったことはすぐに察した。
「すっごく気があってね、一緒にいて楽しいんだ。……愛、今何してるかなぁ」
その愛という少女の事が、本当に大切でたまらないという表情で、花音は言葉を続けていく。
若くして幽霊になった花音。
生前の事を思い出すのは辛いだろうに、会ってから数時間しか経っていないアスミに自分の友人の話をしてくれる。
それが、アスミには理解できなかった。
「……ねぇ、別にいいよ。そういうの。あんたは友達の話するの、その、辛いだろうし」
しどろもどろと花音の言葉を遮る。だが、花音はきょとんとした顔になる。
「え、何が?」
「……だって、生きてた時の事、思い出すの辛いじゃん。……あたしは幽霊じゃないからわかんないけど」
「うーん……確かに悲しいけど……友達には、私のこといろいろ知ってもらいたいし!」
「……え?」
普段、独りで過ごす事の多いアスミが聞き慣れない単語が、花音の口が飛びだす。
「だって、友達でしょ?」
「……いったい、いつからあたしはあんたの友達になったの」
「今、かなっ」
照れたように笑う花音。
見る者を、不思議と温かい気持ちにしてくれるその笑顔に、アスミも自然と薄い笑みを浮かべていた。