第1章 ダイヤのA 御幸一也
夜になり、雨が少しづつ降り始めた
私の手には傘とお弁当の袋
袋の中には、小さい頃一也によく作った梅と鮭とおかかのおにぎり
これを渡して、一也におめでとうって言う
大丈夫
ちゃんと言える
ポケットから携帯を取り出し、一也を呼び出そうとボタンを押そうとしたときだった
・・・・?
降り出す雨の中から微かに声が聞こえた
私は一度携帯をしまい、声のした方に向かった
そこには、雨の中一つの傘に入る二人の姿があった
「え、どうして・・・?」
その二人の姿に私は息ができなくなりそうだった
「なっ、なんで一也と・・・」
私に気づかない二人は強くなる雨音とともに一つの傘で顔を覆い隠した
向かい合う二人の足
一也に向かって背伸びするその姿に・・・
私は傘の向こうの二人が今、この瞬間に
口づけをしたのだと悟った
バサッ―
手に持っていた傘もお弁当の袋も全て手から落ちていく
御幸「!!」
「!!!?」
ウソだって言って・・・・・
こんなの信じたくないよ
「!!ちょっと待って!!」
私を呼び止めた声を振り切って走り出した
雨は一層強くなる
自分がこんなにも心の小さい人間だと思わなかった
「どうしてなの・・・・・」
幸子・・・・・