第5章 昔の事なんだ
目の前の姉さんは姉さんじゃあない、そうだ、ブランドーではない。という名になっている。
「決着をつけに来たわ」
「…まだ根に持ってるのか、あのマフラー」
「違う、そんなことじゃあないの」
じゃあ何なんだと言いかけると、こちらに振り向いた。
直視したの顔は、姉さんの顔だった。悲しそうに、俺を見つめていた。
「…お願い、なんであの時私を追いだしたのかきかせて」
そう、俺はマフラーを売って戻ってきたらすぐに姉さんを家から追い出した。
姉さんは泣きわめいていた。帰る場所がない、やめてよと。だが俺は構わず引きずり出して、少し肌寒い外へと連れ出した。
「ディオッ、なんで、なんで?!何かしたのならあやまるから」
「うるさいな…黙って出て行ってくれよ」
「行く場所なんて、どこにもないのに…ッ」
俺は殴った。父さんが姉さんを殴る時のように、拳で思い切り腹を。
うッ、と這い出してくるものを耐える声をだし、姉さんはその場にうずくまった。
「…姉さんはもう僕の姉さんじゃあない」
「なにを…?!」
「姉さんはもうブランドーじゃあない」
それは別に、法律的に縁を切ったとかそういうことじゃあない。ただ俺が一方的にそう言っただけだ。
姉さんはそれだけでますます泣いた。今目の前で憎しみと悲しみを抱いて俺を見つめるような目で俺を見ていた。
「どう、すればいいの…ディオ」
俺は最後に蹴っ飛ばして家に入った。
姉さんは、入ってこなかった。