第1章 @ 及川徹
「はい、飲んで。」
徹が差し出してきたものは、わたしが愛用している頭痛薬と、飲みかけの水。
『…なんで持ってるの?』
「絢、辛いだろうと思って。」
『わたし徹の前で飲んだことあるっけ…』
「なんとなくわかるよ。早く飲んで。」
頭痛薬とペットボトルを受け取って、薬を飲む。
飲み終わった後も、徹はわたしの肩を抱き、背中をさすってくれていた。
だんだん痛みが引いていったと思えば、雨はすっかり止んで綺麗な星空が見えていた。
「絢!星が綺麗だよ!」
『あの…徹…』
「ん?なーに絢。」
徹はあどけない表情でわたしの方を向く。
『ありがとう、大好き。』
「…そういうの、反則だと思うなー。」
照れ笑いする徹と手を繋いで、雨上がりのアスファルトの匂いがする道を歩いた。