第1章 プロローグ
何かが頭に触れる そんな感触に意識が戻った
目前には真っ赤な空が広がっている
グラウンドでは部活を終えた野球部員が後片付けをしているところだった
「…あれ?」
顔を上げると彼と目があった
「あ、起きた」
メガネをかけて真剣に宿題に取り組む彼
「ねぇ、まさか私…寝てたの?」
恐る恐る聞くと笑顔でニコッと頷かれた
「あまりにも気持ちよさそうに寝てたから
起こすに起こせなくてさ
…それに、また超大作な夢を見てるかもしれないからさ」
またプッと笑い出す
「もうー起こしてよー!
結局宿題進んでないじゃん…」
「まあまあ 夏休みはまだありますからね
…また明日 来てやればいいじゃん」
「…そうする」
ふてぶてしく言う私の頭を彼はポンポンと撫でた
「な なによ…」
「いや?撫でたくなった」
18時の鐘が鳴り響いて校内アナウンスが流れる
『6時になりました。校内に残っている生徒はすみやかにーーー』
「お、もうこんな時間か
帰ろうぜ」
「…そうだね」
もう他の生徒は帰ってしまったのだろう
私たちしかいない図書館を後にする
「なんか、いつもより鮮明な夢を見た気がする…」
「ん?なんか言った?」
「…ううん、なんでもない」