第7章 【おまけ】
私には ずっと待っている人がいる。
『3ゴール差で勝ち』
寂しいけれど、連絡もくれるし時々写真も送ってきてくれる。
あの面倒くさがりだった彼が、今では立派な
バスケ選手として。
*
「青峰くん、進路決めた?」
「あー、んー」
高3の夏、私と彼は彼氏彼女という関係にあった。
付き合ってから1年経ち、進路というものが私達を悩ませていた。
「ほぼほぼ決まってんだけどなー。お前は?」
「私もー…」
「オレ次第ってか?」
冗談ぽく笑うが、実際私が迷う理由はそこだったりする。
でも聞かなくても実は、青峰くんの進路なんて大体予想がつく。
「…まさか。青峰くんはアメリカに行くんじゃないの?」
「なんだよバレてんのか」
「わかるでしょ、バスケ馬鹿なんだから」
「そりゃどーも」
やっぱりね。
さすがに私はアメリカに行く用事は無い。
ただ、遠距離になるのが怖い。
「遠距離かぁ…」
「キレーな姉ちゃんいっぱいいんだろな…」
「コロされたいの?」
「痛えって!冗談だろ!つねるな!」
とは言っても、結局しっかりと見送ることになるんだけど。
「…気をつけて」
「おう」
「危険なことはしないでよ」
「余裕」
「浮気しないでね」
「しねえって」
ずっと待つ。
私は私の、やるべき事をして。
「これ、お守りね」
「…何これ」
「ラベンダーの押し花」
「ラベンダーって…は?」
「これには意味があるの!」
「ふーん」
だから必ず、強くなって帰って来て。
「お前こそ、浮気すんなよ」
「するわけないじゃん」
「そりゃ良かった。まぁ気が向いたら連絡してやる」
「うん」
「泣くなって」
「泣いてない」
「ハハッ」
「…すき」
「知ってるっつの。…オレもだ」
ああ、いつからこんなに頼もしくなったの。
この手を放したくない。
「おい青峰、時間だから行くぞ」
「へーへー。…じゃあな」
「うん、火神くんと仲良くね」
「多分な」
最後にとびきりの笑顔を見せてくれた彼は、しっかりと前に進んで行った。
*
ラベンダーにはいろんな意味がある。
『あなたに幸せが訪れますように』
『あなたに癒しを与えます』
そして
『私はあなたをずっと待っています』
end