第10章 恋愛論Ⅹ
「あーっす、」
今日もチカちゃんが気の抜けた挨拶をする。ただ昨日と違う、先生らしいアイロンの効いた淡いブルーのシャツに、チノパン姿、黒縁のダテ眼鏡なんてかけている。清潔感丸出しで、髪の毛も軽くセットされていて。
「チカちゃん、どーしたの、それ!」
諸星くんが一番にその異変に気づく。生徒全員が、爽やかチカちゃんに釘付けで、もちろんあのお方も。
「・・・・・・、」
ダメだ、あの京ちゃんが完全上の空。まあそうなるよね。
「ん?イメチェン。」
「なんで!」
「デートなの、今日。」
優しく笑うチカちゃん。
その言葉にハッとする。京ちゃんの顔が見れない。京ちゃんの気持ちなんて知るはずのない諸星くんのテンションがさらに上がる。
「まじで!大人の女!?」
「うん、そおね、大人の女。」
チカちゃんが京ちゃんを見た気がした。
「大人ってずるいね。」