第5章 恋愛論Ⅳ
「・・・先輩は、私のこと・・・」
さっきまでの期待を恐る恐る、口にしてみる。
「は?期待してんじゃねーよ。お前は久世を知るための道具。」
「・・・、で、すよね。」
「何?俺がお前のこと好きかも、なんて少し思ったわけ?」
「ええ、まさかのそれです。」
「・・・可哀想。」
「って、誰のせいですか!」
「誰?」
「あなたです、返してください、15分前までの私の気持ち。」
「知らん、恋とか、愛とか、ほんと、うっとおしい。」
「・・・じゃあ、なんで!」
妹さんの恋だの、愛だのに首を突っ込むんですか。
先輩はまた私を睨み、関わるな、とでも言うように目を細める。
「うっせえなあ、お前に関係ない。それより、お前、新田のこと好きなの?だから久世のこと教えないわけ?」
「ち、違います!私は先輩のことが・・・!」
勢いで出てしまった言葉に口を塞いだ。先輩が死んだ魚みたいな目で私を見る。そんな目、見たことない。
「どうして欲しいの?」
「・・・え」
「何をして欲しいのか、っつってんの。」
先輩の冷たい視線が突き刺さる。なんとも思っていない人からでも好きだと、好意を持ってもらうのに嫌な気はしない。でも先輩は違った。こんな悲しい目をして、こんなにキツイ言葉を言う。