第17章 episode Ⅳ 新田 光
「あー、やっと来たな、にったあ」
職員室に行くとチカが俺を見て黒渕の眼鏡をじいさんみたく下げる。
「チカ、俺だって美人の先生に呼ばれたいよ」
「贅沢言うなよ、
俺だって美人っちゃあ美人だぜ」
「いや俺の方が」
「先生、早く本題にいって下さい」
いつものようにチカと言い合っていると、今まで気付かなかった小さな女子が俺の隣にいた。
「う、わ」
驚いてそちらに目をやると、見覚えのある彼女。
「ああ、ごめんごめん、橘。
お前が一番美人「そんな話、してません」
「橘」と呼ばれた、人形のような可愛らしい小さな顔、さらっさらのブロンドに近い髪色、細くて白い腕。
その彼女が視線をこちらに向けて、小さく笑う。
「お久しぶりです、光さん」
橘 鈴音、平穏な俺の高校生活で、唯一関わりたくない人。
『 episode Ⅳ 新田 光 』前半END.