第18章 て言うか肝心なトコロを聞いてない事に気付いた。(黒尾鉄朗)
「なぁ、お前なんで研磨にはそんな甘いワケ」
「可愛いから」
「俺にはキツくね?」
「…は?クロは自分の事可愛いと思ってんの?」
小さい時から場面は違えど、幾度となく繰り返されてきた似たような会話。
研磨、俺、は所謂幼馴染み。
バレーも昔から一緒にやってきた。
唯一女子であるは俺らとつるんでばっかりだった事もあり遠慮ってモンが一切ない。
「研磨ぁ、ジュース一口ちょーだい」
「ん」
その上、何故か俺と研磨を差別する。
研磨の食べ掛けのパンや飲み掛けのジュースは平気で飲むくせに俺のは絶対に食べない。
「あ、ドラマの録画予約忘れてた…」
「また海外ドラマ?」
「そう、先帰るね」
「研磨、お前コレどうすんだよ!」
今日は俺の家に集まって次の公式戦の相手のDVDを観る事になっていた。
「ごめんクロ、と二人で観て明日教えて」
「えー、研磨帰るなら私も帰る」
「テメ…!」
「ダメ、はクロと仲良く研究よろしく」
「はぁー?!」
はぁー?!じゃねぇよ!こっちがはぁー?!だっての。
そうこうしている間にパタンと俺の部屋の扉が閉まり研磨の姿がもうない。
仕方なく俺はノートパソコンにDVDをセットする。
意外だったのはが大人しく部屋に残っている事だ。
速攻で研磨の後を追うかと思ったのに。
「何、ジロジロ見て」
「別に」
「あっそ」
素っ気ない態度に心の中で舌打ちをした。
でもちゃんとノートとペンを用意してポイントを書こうとするあたり真面目だと少し感心してしまう。
「メモんのか、さすがマネだな」
思わず感じたことをそのまま口にしてしまった。
「…ばっ!///バッカじゃないの!あああ当たり前でしょ!!?//ちゃんと皆に伝えなきゃなんないのに!」
「……お、おう?」
顔を真っ赤にしてマシンガンの様に喋るコイツはやっぱりいつもと違う気がした。
俺が驚いてる事に気付くと今度は急に大人しくなって膝を抱えて俯いた。
チラッと見えた顔は、とても赤い。