第1章 世界は実は5分前に始まったのかもしれない。(澤村大地)
それは見覚えのあるピンクのハンドタオル。
「あ…私のタオル…」
「やっぱりコレ探しに来たんだ、うちの奴らのにしては可愛すぎるタオルだったから…ちゃん、で呼び方合ってる?」
「なんで名前…///」
「ここ、書いてあったから」
タオルの端を見せながら先輩はニッコリと笑う。
「澤村先輩…練習行って下さい…私、先輩の邪魔したくないです…」
「顔に見合わず意外と頑固だね?(笑)」
「う……」
「じゃあこうしよう、後5分俺ここで休憩していくよ」
「へ?」
「それなら部活の流れの一部だし、問題ないよな?」
また先輩が私に向けて笑った。
もうそれだけで泣きそうです…。
「わかりました…」
「よし!後輩は先輩に甘えてればいいんだからな」
私の頭を撫でる先輩の手が温かくて、睡魔が来る。
一緒に居られるのは後5分しかないのに、瞼を閉じるなんて勿体ない…。
でも、私は襲ってきた睡魔に勝てず夢の中に落ちてしまった。
「…女の子とこの状況ってのもヤバいよな…////」
先輩のこんな葛藤なんて知る由もなく。
「澤村…せんぱ…い…」
「!!//////」
目が覚めたら、お礼を言いにまた体育館に行かなくちゃ。
今度はちゃんと前を見て、ボールに当たらないようにしながら。
END
アトガキ➡