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High Q!!!(ハイキュー短編小説)

第47章 貴方から届いた50音の最初の2つ。(月島蛍)


今までにこんなに緊張した登校時間があっただろうか。
昨日、弟に告げられた月島くんからの伝言を思い出す。



『最初の2個を、明日お姉ちゃんにあげますって…逃げないで学校に来てねって』




50音表の、最初の二文字。
それは“あ”と“い”。
この二文字を…“愛”と解釈するのは都合が良過ぎやしないだろうか。

それでも、そうだったら良いのにと思わずにはいられず、は頬を染めた。

教室に入ると月島の姿はまだなく、少しはホッとして鞄を下ろした。
会いたいけれど、どんな顔して会ったらいいのか。
その答えは見つかっていないから。


「おはよ」
「……!!……つ、きしまくん…!おはよう…!」
「?…何、挙動不審になってるのさ」

部活の朝練が終わり、チャイムが鳴る少し前に月島は教室に入る。
を見つけて声を掛けるも、目があっちこっちに泳いでいる彼女を見て月島は眉間にシワを寄せる。
が、すぐにピンと来てその口元を少しだけ緩めた。


「……僕の事、意識してんの?」
「へ………あ、違…っ」
「へぇ…違うんだ」
「ち、が…くない……けど…あの、」


キーンコーンカーンコーン…

ホームルーム開始のチャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。

「…昼休み、付き合ってね」
「…………うん」

有無を言わさぬ勝ち気な笑みには頷く他、選択肢はなかった。

それから昼休みまでの間の授業なんて頭に入らなくて、考えるのは月島の事ばかり。


(テスト…心配になってきたよ……)


もうすぐ中間テストだって言うのに。
小さく溜め息をついて全く頭に入らない先生の話へと耳を傾ける。

昼休み開始のチャイムが鳴り終わるタイミングで月島はに声を掛ける。

「行くよ」
「へ、あ…っ月島くん……!?」

月島の大きな手がの手首を掴む。
慌ててお弁当を掴んで引かれるがままに教室を出た。

廊下を進むにつれ、背中に刺さる視線が増えていく。

学年でもモテる部類に入る月島。
ファンは多かれど、浮わついた話が全くなかった彼が女の子の手を引いて歩くのだ。
注目されない筈がない。

耐えられなくなっては俯いたまま月島の後に続いた。


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