第6章 席替えなんてこの先ずっとなければいいと思う。(菅原孝支)
「嫌だったわけじゃないよ、寧ろ…気持ち良かったし…///」
「菅原…」
菅原は照れたように頬を掻いた。
「朝練で疲れてさ、ちょうど眠くなる時にいつも優しく撫でてくれる手があって…それがの手だってわかってさ、それからは毎日期待してたんだ」
「…へ?」
「今日も、頭撫でてくれるかなって」
「///!!」
そう言って笑う菅原の笑顔が眩しくて、目が眩みそうになる。
「だから、謝る必要ねーべ?」
菅原の手が私の頭を撫でる。
人に撫でられるって言うのはこんなに心地よいものなのだろうか。
…きっと、菅原の手だからだろうな。
同じように思ってくれてたの…?
「それからさ」
「?」
「…もう一回、名前呼んでよ」
「菅原…?」
「そうじゃなくて下の」
「え…?」
驚いて菅原を見ると爽やかに微笑む彼がいて。
「…出来たら、これからずっと」
呼んで?と促され恥ずかしさを堪えつつ口を開いた。
周りに聞こえないように、彼だけに届く様に。
「こ、孝支……」
「…もっと呼んで」
徐々に近付く距離に心臓が飛び出しそう。
気付けば彼の綺麗な顔が間近に迫っていて。
「孝支…///」
「俺も呼んでいい?」
「え…?」
「…」
教室にはまだ人がいるのに、窓際の一番後ろのこの場所だけは別世界に感じてしまう。
カタンと音を立てて菅原が椅子から立ち上がったかと思うと、教科書で顔を隠して私にキスをした。
多分触れていたのは1秒なかったと思う。
それでも私には時間が止まったように感じた。
「す…!菅原っ!?///」
「誰も気付いてないから大丈夫、それより名前は?」
「…あ……孝支」
「これからも俺を癒やしてくれる?」
「……はい///」
私の返事にニッコリと笑う彼に、癒されてるのはこっちの方だと思っていたらまた頭を撫でられた。
やっぱり、菅原の手は心地よい。
END