第6章 席替えなんてこの先ずっとなければいいと思う。(菅原孝支)
菅原の髪の毛はサラサラでフワフワ。
目の前にあるとつい触れたくなるのだ。
運の良いことに私の席は菅原の前で、机に顔を伏せている彼の頭が手の届くところにある。
「………」
最近の菅原は授業の終わり頃から休み時間もこうして机に伏せている事が多い。
バレーの練習、キツいんだろうなと思う。
起きないかな…?
少しドキドキしながら髪に触れる。
「ん…」
菅原の口から漏れた声にドキリと胸が鳴る。
まだ目を閉じている彼を見て起きてないことを確認する。
「菅原…」
「……」
寝ているのだから返事はない。だったら、呼んでみてもいいよね…?
「孝支…」
戸惑いがちに彼の名を呼ぶ。
周りに聞こえないようにとてもとても小さな声で。
普段じゃ絶対に呼べない名前。
これ以上は起こしてしまうかもしれない。
そう思った私は彼の髪から手を離し前を向いた。
「あれ…、今日はもうおしまい?」
「ッ!?」
後ろから声を掛けられて慌てて振り向くと机に肘をついてこちらを見てニコニコと笑う菅原の姿。
「すっすが…わらっ…起きて?!いつから…!」
「今日は名前呼ばれた時くらいかなー」
「////!?」
今、菅原は…『今日は』って言った…。
と言うことは、まさか。
「?あぁ、うん…いつも起きてた」
「!!!」
言わんとしていることが顔にきっと書いてあったんだろう、菅原は私が聞く前に答えた。
一番恐れてた答え…。
「ごめん!ごめんね、私あの…菅原の髪好きでっ…あ!だからって勝手に触っていいわけじゃ…」
必死に謝る内にじんわりと目に涙が溢れてしまう。
悪いのは私なのに、泣くのは違うだろう。
「?あー!泣くなって、そうじゃなくて」
「……?」