第43章 僕たちのポートレート。【菅原END】
東京体育館の大舞台。
眩しいオレンジコートの輝きに負けないくらい輝いていた彼らに私は夢中でシャッターを切り続けた。
カシャ
カシャ
どんなに劣勢になっても下を向かず、諦めないその姿に感動していたのはきっと私だけじゃない。
試合後に巻き起こった会場中からの拍手は彼らがコートを後にするまでずっと鳴り止むことはなかった。
烏野高校バレー部の全国への挑戦は、
因縁、音駒との熱戦を制した後、続く準々決勝で梟谷の前に姿を消した。
ベスト8。
輝かしい成績だし、バレー部のみんなの顔は全力で戦い抜いた清々しい顔をしているのに。
(私だけが、寂しい…のかな、)
この一年の全てを共にしたわけではない、この春高までの道のりに関わっただけなのに。
まるで心にぽっかりと穴があいたようだった。
「菅原…先輩……」
新幹線を待つホームでポツリとその名前を呟いた。
今一番会いたい、けれど会った所でどんな言葉を掛けるのが正解なのか私にはわからない。
バレー部の練習に顔を出した日は必ず一緒に帰ってくれた。
私の写真を見て笑顔になってくれた。
私はいつのまにか、
その笑顔が何よりも見たくて。
『3番線、列車が到着致します』
東京から乗る予定の新幹線。
ホームへ入ると言うアナウンスが聞こえた。
その、直後。
「ッッ!!!」
忙しなく往来する人の中、だけが足を止める。
聞き間違える筈がない。
だってそれは、ずっとずっと想っていた人の声。
「すが、わら…先輩…………」
が振り向くと肩で息をした菅原の姿があった。
と目が合うと息苦しそうだった顔がふにゃりとした笑顔に変わる。
「良かった……間に合って…」
「先輩…どうして………」
「清水がさ、宿に泊まるよう誘ったんだけど断られたって言ってたから…、きっと一人で帰るつもりなんじゃないかって思って」
「…………」
「あ、大丈夫!ちゃんと大地にも先生にも許可取ってきたから!」
笑顔の菅原に胸が締め付けられる。
こんな時まで私の事を気にかけてくれている。
そう思うと、じんわりと涙が浮かんでくる。