第41章 僕たちのポートレート。⑥
「縁下、くん……?」
「さん」
「は、はい…!」
突然丁寧に名前を呼ばれ、は返事をしながら思わず背筋を伸ばす。
「普段の少しオドオドしている所も、カメラを構えると別人みたいに楽しそうで夢中になっている所も」
「…………」
「俺は、全部好きです」
縁下に言われた言葉を理解した途端に熱を持ち出す顔と繋がれたままの手。
は勢い良く下を向いた。
元旦からどう考えたっておかしい。
菅原先輩と縁下くん、二人から告白を受けるなんて信じられない…!
「?」
優しくて甘い声が頭上から降ってくる。
「やっぱり困らせちゃった?」
「こま……った、とかじゃなくて…!!信じられないだけで……っ」
「あれ、俺の気持ち届いてない?」
「……!?い、いや…そうじゃなくて……!」
「もう一回言おうか?」
「い、いいです……!!」
「じゃあ何が信じられないの?」
慌てるにも縁下は普段通りのトーンで話を進める。
は大きく深呼吸をしてゆっくりと口を開いた。
「わ、私なんかの……どこを好きになれるのか…理由が見つからないよ…!」
「さっき言っただろ、オドオドした所も、写真撮ってる格好良いも好きだって」
「……っ、!!」
不意を突かれて縁下からの二度目の「好き」を真正面から受け取ったの顔は林檎みたいに真っ赤に染まる。
「縁下くんも……菅原先輩も……なんで………」
「あ、やっぱり菅原さんにも告白されたんだ?」
「!!!!」
ふと口をついて出てしまった名前には
慌てて口を押さえるももう遅い。
顔を上げれば縁下が困ったように笑っていた。
「……返事は今すぐって言いたいけど、色々頭を整理したいだろうし待つよ。なんなら春高が終わってからでもいいし」
「………でも…!」
「大丈夫、試合にはしっかり集中して挑むから」
の言葉を遮るようにそう言った後、縁下はそっと繋いでいた手を離した。
「じゃあ…午後から練習だし、そろそろ行くよ」
「………う、うん…」
離れた手が寂しい、そう思ってしまうのは何故だろう。
は自分の手をぎゅっと握り締めた。