第30章 閉店時間まで後一時間とちょっと。(澤村大地)
澤村先輩は、モテる。
でもそれは月島くんや影山くんみたいな、あからさまなモテ方ではなくて。
陰からそっと見守ったり、心の中で想ったりされる様なそんなモテ方。
かく言う私もその内の一人だったりする。
この事を知っているのは幼馴染みの菅原孝史ただ一人だけ。
「あーいたいた!、テーピングのストックがなくなりそうなんだけど買い出し頼めるかな?」
「だっ…!さっわ…澤村先輩…!!///」
今正に考えていた人が突然目の前に現れて思わず声が上擦ってしまう。
「大丈夫か?」
「はい…すいません!テーピングですね、買ってきます!今すぐ買ってきます!」
「今からって…そりゃ助かるけど時間ももう遅いし、また別の日でもいいんだぞ?」
「いえ!足りなくなったら皆さんが困りますから行ってきます!」
私の、憧れてやまない人。
大好きな人。
バレー部の頼れる主将は部員からの信頼も厚い。
それはマネージャーである私にとってもそうだし、部活以外の女子にとっても例外ではないのである。
時々気付いてしまう、澤村先輩に向けられる女の子からの熱い視線。
私も同じ気持ちだからきっと気付いちゃうんだろうな。
幸いにもマネージャーと言うポジションにいる私は今みたいに関わる機会も多いから嬉しくて堪らなくなる。
「心配だし、今から買いに行くなら俺も一緒に行くよ」
「えぇっ!!??」
「そこ、そんなに驚く所か?(笑)」
「いえっ…!私なら大丈夫ですので!!」
澤村先輩と二人で買い出しなんて心臓がきっと持たない。
そんな醜態を憧れの澤村先輩に見せるわけにはいかないのだ。
「ー!帰るよ…って大地?」
「孝、ちゃん…!」
同じ方角に帰る幼馴染みがいつもの様に支度を終えて私を迎えに来た。
「何ならこの人付き合わせますので!!大丈夫です!テーピングばっちり買ってきます!」
「え?何??テーピング?」
「ではお疲れ様でした!また明日の朝練で!」
ペコリと頭を下げ、私は孝ちゃんの腕をぐいぐい引いてその場を後にした。
孝ちゃんは何がなんだかわかってない様子だったけどお構いなしに引っ張っていく。
澤村先輩がそんな私達をどんな顔で見ていたかも知らずに。