第4章 君を手に入れる為に裏切る痛みを感じるかどうか。(赤葦京治)
ネットで見つけた時は少し迷った。
ソレを使う事がフェアじゃないとわかっている。
だけど、スマホ越しに木兎さんとさんの笑う姿を見たらボタンを押していた。
さんに渡したのは、媚薬。
「ごめんね、さん…」
もう姿のない彼女の去った方角に向けて静かに呟いた。
ソレを飲むか飲まないかは後は貴女次第。
放課後、
今日は自主練日だから、木兎さんはきっともう練習を始めてる。小見さん達も一緒だろう。
俺は体育館へ行く廊下とは別の渡り廊下を通っていた。
向かう先は生徒会室。
控え目にノックをした後、返事を待たずにドアを開けた。
そして、静かに鍵を掛ける。
「……っあ、赤葦…くん?」
「……さん」
机に顔を伏せて苦しそうにしている彼女。
赤い顔、乱れた息。
あぁ…飲んじゃったんですね…。
「ごめんっ…赤葦く…なんか体調が…んっ、おかしくて…」
「やっぱり疲れてたんですよ」
側まで近付き肩に触れる。
「んんっ…赤葦くん…今っ…触られるとダメで…」
「……さん、欲しいものありますか?」
「………っ」
さらりと彼女の頬を撫でる。
潤んだ瞳が俺を捉えていた。
「あ……」
物欲しそうな顔で俺を見つめたさんはゆっくりと顔を寄せ小さなキスを落とす。
それがスイッチになったかのように、俺のシャツを掴んで身体を寄せる。
「…、さん……」
キスに応えるために彼女の口内に舌を滑り込ませた。
静かな生徒会室には乱れた息づかいとくちゅりと言う舌を絡ませる音。
(まいったな……)
罪悪感よりも、手に入れた高揚感の方が勝っている。
「赤、葦くん…はぁっ…」
「すぐ…楽になりますよ」
心の中で、一度だけ木兎さんに謝った。
そして俺はさんのシャツのボタンに手を掛けるんだ。
END