第28章 一学期に見つからなかった答えは二学期にある。(山口忠)
「いや…っ!今のは違…くはないんだけど!!あの…!えっと…」
「…うん、えっと、ありがとう///」
俺を見ていた目がそっと床に視線を落とし、彼女は恥ずかしそうにはにかんだ。
トクン
また、心臓が跳ねた。
一学期にわからなかった答えが今ならわかる。
俺は、さんが好きだ。
「………っ」
でもそれを伝える自信はまだまだ俺にはなくて。
(ツッキーみたいにカッコ良くなれたら…)
トイレに寄ってから教室へ行くと言っていたツッキーの席に目をやる。
拳をぎゅっと握り締めるとじんわり汗を掻いていた。
「あの!さん!」
「は、はい!」
今の俺に言える精一杯を君に。
「こ、今度…時間ある時でいいから練習観に来てくれないかな…」
まだ好きだって伝えられないから。
でも、今の俺を見て欲しいんだ。
「……観に行っても、いいの?」
「え…うん!来て欲しい…っ」
予想外の返事に思わず前のめりになると彼女は笑いながら「じゃあ早速今日観に行こうかな」と言ってくれた。
その日は一日ずっと落ち着かなくて。
ツッキーにも変な目で見られた。
「なぁなぁ月島ー!あの子誰?」
「同じクラスのさん」
「見学者か!もしかしてマネージャー希望とか!?」
「さぁ……違うと思うけど」
部活前、さんは本当に体育館に来てくれた。
近くで話している日向とツッキーの会話にドギマギしてしまう。
「マネージャー希望じゃないのかー…ならなんで見学???」
「……山口が知ってるんじゃない」
「……!!??」
しつこい日向にウンザリしていたツッキーは横目で俺を見てそう言った。
あぁ…今度は俺が質問攻めか。
それでもやっぱり嬉しくて、シューズの紐を結ぶ手にも力が入る。
「…よし!」
いつか絶対に気持ちを伝えよう。
その時も君は笑ってくれるかな。
END