第27章 可愛い君の成長過程に大いに期待する!(影山飛雄)
岩泉がやれやれと溜め息をついて及川を引き剥がそうと手を伸ばした、その時だった。
「うひゃあ…!?」
「何、やってんすか…」
岩泉の手が届くより先に別の手がの腕を掴んで引き寄せた。
ぶつかる。
来るであろう衝撃に備えては目を瞑ったが、その衝撃は思っていたよりもずっと優しいものだった。
鼻を掠める、柔軟剤と仄かな汗の匂い。
の一番落ち着く匂い。
ゆっくりと顔をあげると及川を睨み付けている影山の顔があった。
「飛雄っ!」
は嬉しそうに影山の胸に顔を擦り寄せた。
「お邪魔虫め…」
「それはお前だろーが、あんま遅くなんなよ」
「うん、ありがと岩泉!」
嫌がる及川を連れて岩泉はその場を立ち去る。
気を利かせて二人きりにしてくれた岩泉には
心から感謝した。
「久しぶり!飛雄っ♪」
は抱き付いたまま影山の顔を見上げる。
この3年で身長差はみるみる内について、もう見上げなければ目線を合わす事も難しい。
「……っ」
「会いたかった」
「…俺も、です」
影山もの背に腕を回して強く抱き締める。
「何で及川さん、抱き締めてたんすか…」
「ごめん、振りほどこうとしてたんだけどね」
「………」
「飛雄、妬いた?」
「……っ」
ぎゅっと抱き締めたまま影山はコクリと頷いた。
「ふふ…っ♪ちょっと嬉し…」
「む…」
「飛雄、聞こえる…?私、すっごくドキドキしてる」
「…!」
鼓動がとても速い。
それはに限った事じゃなくて。
「飛雄も、速いね」
「////」
「すっかりカッコ良くなったね…」
「先輩」
「ん?」
「先輩は俺のですよね?もう及川さんに触らせたらダメっす」
真っ直ぐにを見据えて言う影山。
その顔はすっかり男の顔だ。
「う、うん…///」
「今日は一緒に帰れますか」
「ハイ…帰れますっ!///」
「練習試合終わったら校門で待ってます」
が頷いたのを確認すると影山はチームメイトの待つ場所へと戻っていった。
「あそこまでカッコ良くなるなんて聞いてない…」
遠ざかる影山の背中を見送りながら熱くなる顔を必死に冷まそうとしていた。
END.