第23章 一足遅れの春がとても暖かい事を僕は知っていた。(松川一静)
四年後………
「松!ごめんトイレットペーパーのストック出しといてくれる?あたしアソコ届かないんだよ…」
「オッケー」
「やっぱ踏み台買うかな…うーん」
「踏み台なくても俺が届くんだからいいでしょ…それよりもいつまで“松”って呼ぶの?」
「う…//だってまだ慣れない…!」
あれから四年経った今、松川とは同じ家で生活をしていた。
そして夏にはも松川の姓を名乗る。
「だってもう“松”になるんだから、ね?」
そう言って松川はを後ろから抱き締める。
大学に入ってからも更に身長が伸びた松川をは真っ赤になって睨む。
もう完全に見上げる形になってしまった。
「あーもう!早くしないと加奈子と花来ちゃうだろ!」
「ハイハイ(笑)」
あっさりとを解放した松川はトイレットペーパーのストックを出しに棚へ向かう。
「後、お客さん用のティーカップも出しといて………一静…///」
「………」
扉に手を掛けたまま松川は動きを止める。
「…もう一回……//」
「もう言わない!!」
「お願い」
「ダ…ダメだ!」
そんな二人のやり取りが続く中、家に響いたインターホンの音。
「ホラ!二人来ちゃった!急げ!」
「チッ…」
「し、舌打ちすんな…!あたし玄関行くからトイレットペーパーとカップよろしく!」
慌ただしく玄関へと走って行くの後ろ姿を松川は笑いながら見ていた。
「あーホント可愛い…(笑)」
独り言の様にそう松川は呟いて今度こそトイレットペーパーのある棚へと向かって歩き出した。
もうすぐ一足遅い春本番がやってくる。
たくさんの花を咲かせに。
END.