第23章 一足遅れの春がとても暖かい事を僕は知っていた。(松川一静)
仲の良い男女四人の関係が崩れるきっかけは大体決まっている。
(花、また加奈子を見てる…)
四人の中で恋愛感情が生まれてしまう事。
そして関係を壊さない方法もまた大体決まっている。
『好き』と言う感情を自分の中だけの物にしてしまう事。
そうすれば四人の関係は壊れない。
「……?箸止まってるけど食べないの?」
「へ?あ…松…いや、食うよ、食べます!」
昼休み、いつもの屋上でいつもの四人で昼食。
松川に指摘されては慌てて箸を動かす。
「!食わねーなら俺に唐揚げちょーだい!」
「だから!食うって言ってんだろ!!」
「早くしないとチャイムなるよ?」
「わかってる!あ、加奈子委員会の資料運ぶって言ってなかった?」
「あ?そうだった、ありがと」
一年生からクラスも一緒の四人。
付き合いは今年で三年目になる。
すぐ調子に乗るけど頼りになる花巻。
しっかりしていて落ち着いている松川。
女の子らしくて優しい加奈子。
そして、口は悪いけど周りの事をよく見てる。
そんなだから気付いてしまった。
最近の花巻は明らかに加奈子を見ている。
「だったらもう戻ろうか」
「ん、あたしも食べ終わった」
「ごめん、皆ありがと…」
屋上の扉を花巻が開ける。
「ほら加奈子、段差あるから」
そして自然に加奈子に手を差し伸べた。
そんな様子を見てはもう一つの事に気付く。
(まただ…)
花巻が加奈子を想う事を嫌がっている自分がいる。
「ありがとう、花巻くん」
「加奈子はそそっかしいからな」
こんな感情気付かなければ良かったのに。
何度、そう思っただろう。
幸いは最後尾にいたため誰にも顔を見られずに済む。
小さく溜め息をついた所で前を歩いていた松川が突然振り返った。
「」
「……っ!……松、なに?」
油断していたは持っていた弁当箱を落としそうになる。
「ん」
「……あたしはこれくらいなんでもないっての」
「そう?」
花巻と同じように手を差し伸べた松川はに断られたと言うのにうっすらと笑みを浮かべていた。