第21章 髪の毛を切りました。(ALLキャラショートストーリー)
Kentaro Kyo-tani.
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「あれ?京谷くん久しぶりだね」
「…ウス」
春高も終わり、新チームとして動き出した青葉城西。
ウルトラ問題児の京谷も烏野とのあの敗戦以来、毎日練習に顔を出していた。
そして部活が休みの月曜日は以前世話になっていたこの体育館で練習するようにしている。
「普段ここに来ないって事はちゃんと部活出てるんだね、エライエライ!」
眩しい笑顔の彼女はと言って近くの女子大の2年生。
京谷と同じ頃からここに来始めてバレーをしている。
長い髪をポニーテールにしていて、それが揺れるのを見る度に京谷の心は落ち着かなくなっていた。
「!」
だが、今日はそのポニーテールがない。
それどころか長かったはずの髪がバッサリと切られているのだ。
「サン…髪、」
「え?あぁ、うん…昨日切っちゃった!」
あははと笑いながらは自分の髪を手で触る。
「どーせ切るなら京谷くんみたいにライン入れてみても良かったかも!なぁんてのは冗談だけどね」
「…なんで切ったんすか」
京谷くんのストレートな物言いに、の顔が一瞬曇る。
「……んー、失恋しちゃったから、かな…まぁ、ベタだけどね!」
尚も笑うだったが、京谷は笑わない。
黙って真剣な目で彼女を見つめているだけだった。
まるで、全てを見抜くようなそんな視線。
「……それは冗談だって言わねンすか」
「…京、谷くん」
京谷は着ていたジャージを脱いで鞄の上に無造作に投げ置いた。
ドキリとの胸が鳴る。
しばらく見ない間に腕も背中も、随分と逞しくなっている気がした。
「俺は」
そっちのが好きっす、と顔色一つ変えずに言う。
「えっ…」
予想外の人から、予想外の言葉にの方が困惑してしまう。
そこへトドメの一撃。
「…次誰かに理由聞かれたら、」
「理由…?」
「…俺の為に切ったって言えばいっす」
「!!」
言いたい事だけ言って京谷はさっさと自分の練習をしにコートへ。
残されたの顔は真っ赤だ。
「い、言えるわけ、ないじゃない……!恥ずかしすぎるよ…!」
それでもの心が少し軽くなったのは、事実。