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アマテラス

第1章 第一章 悪夢


『爆撃だ!オーストラリアの爆撃だぁぁぁ!』
記憶の奥底にある、確かな記憶。

2012年12月21日、オーストラリアによる全世界への宣戦布告が宣言された。
それと同時に、オーストラリアは近隣諸国への進攻を開始。
瞬く間に国は亡び、占領されていった。
そして、戦火はそこだけでは終わらず、
日本に潜伏していたオーストラリア兵による、
爆撃作戦が行われたのだ。
突然の爆撃により、日本は成す術もなく、
国土を蹂躙されてしまった。

あの時の記憶か…。
目の前には12歳だった自分と、その後ろを追いかける10歳の妹、亜美がいた。
丁度、右の方向で爆音が響いた。
『お兄ちゃん!足が…足がァァァァ!』
俺がその声を聞き後ろを振り返ると、
そこには、爆撃により飛ばされてきた建物の一部に足を挟まれた妹の姿があった。
「…あ…亜美…」
何もできなかった。
俺は、非力だった。
ただ、妹が泣き叫ぶ姿と声を、見て、聞く事しかできなかったんだ…。
『痛い!お兄ちゃん、痛いよぉ!いッ―――」
妹の断末魔を閉ざすかのように、
そこにまた建物の一部と思われるモノが落下する。
そして、妹の血液が、俺の身体にビシャッという音と共に飛び散る。
「…ッ!」
本来ならば発狂してもいい状況だった。
今思えば、あそこで発狂しなかった自分は、
よっぽど精神力が強かったのか、すでに狂っていたかのどちらかだった。
俺は一目散に妹だったモノが潰されている向きとは逆方向へ走り出した。
「仇はとる…仇は…とるからな…」
今思えば、あの頃の自分は、精神力が強かったわけではなかったのだろう。
恐らく、あの頃からすでに自分は狂っていたのだ。
両親が逃げ遅れて死に、
逃げている途中で妹の断末魔を聞いた挙句、
目の前でその妹が潰され、血液が自分の身体に飛び散る。
普通なら、まともではいられない状況だった。
「俺は…何もできやしなかったんだったな…」
そう呟いた。
と、同時に、目の前が真っ白になる。
「…クッ…ぐ!」

目が覚めるとそこは、基地の自室だった。
「夢…だったか」
今までの事が夢であった事と、
それによるものなのか、自分が
汗をびっしりかいていることを認識する。
「…悪趣味だ…悪趣味だぜ、こんなの…」
14年前の惨劇を夢として見る。
ここまで最悪な夢はない…。
「…悪夢、か。こういうもののことを、
言うんだな…」
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