( utpr*短編 ) キスの仕方を教えてよ ( 美風藍 )
第1章 本編
「琉陽」
高めの澄んだ声がわたしを呼ぶ。その声の方向に素直に振り向いて、なに、と小さく首を傾ぐ。
彼、藍はソファの上から自分の隣の空いてる場所をぽんぽんと叩いて「おいで」、と言った。
そんな小さな仕草にも、どきっとして。
きゅんとして。
わたしは逆らう訳も無く、藍の隣に腰掛けた。そのまま藍の方を向くと、当然のことながらばちりよ目が合う。
なんだか急に恥ずかしくなって、反らそうとするけど、藍はわたしを引き寄せてさらに近づけた。
綺麗な透き通った眼がわたしを映す。今時の科学は進歩してるなぁ、と再確認する。いや、科学なんて関係ない。多分、わたしは藍だからこそ好きなんだ。
この眼が。
全てが。
「…どうしたの、ぼーっとして」
藍が言う。わたしははっとして慌てて首を振る。
「う、ううん、なんでもない…」
「うそつき」
藍はわたしの額に軽く口付けした。なんでも分かるんだからね、という台詞とともに。
「…凄いね、藍は」
「何が?」
「ぜんぶ」
「スパコンだから」
「関係ないし」
ふふっと笑って藍がまた口付ける。今度は頬に、目尻に。
そして少し顔が傾いて、正面から唇を寄せられる。わたしは条件反射で目を閉じてしまう。
でも、予想していた温もりはこない。薄らと目を開けてみると、藍がじいっとわたしを覗き込んでいた。その近さに、思わず顔が熱くなる。
「ど、したの」
わたしがしどろもどろに言う。すると藍は、ちょっとだけ小首を傾いで、
「思ったんだけど、琉陽からキスってして貰ったことないよね」
いきなりの、問いかけ。
わたしは目を瞬かせながら思考を巡らせる。
確かに、わたしからキスしたことはない。抱きついたことは何回かあるけど。元々そういう性格でもないし、なんか恥ずかしいし。
「そう、だね?」
「うん。だからさ」
にこ、と藍が笑う。滅多に笑わないのに、こういう時だけ、ずるい。
「して?」