第2章 相合い傘の約束
「さん。もしこれがワガママだと言うなら、僕はもっとワガママです。
体調の優れない貴女を前に、貴女に触れたい…抱き締めたい…交わりたい…などと
到底、まともだとは言い難い感情で理性を保つのが大変なんです。」
するとゆっくりと瞼を上げたさんが僕に向き直る様にして、
身動ぎました。
「双熾さん。それはワガママとは言わないのよ?」
僕の頬に添える様に彼女の手が触れる。
「ですが…
「愛し合う恋人同士が触れたいと思うのは当然でしょ?
私も貴方に触れたい…そう思っているのに。」
僕の言葉を遮る様にして返ってきた彼女の言葉は僕の心を甘く満たしていきます。
「風邪が治って…二人の時間が出来たら、今度は私が双熾さんのワガママを聞いてあげる。」
彼女は楽しそうにクスクスと笑います。
「でしたら…。」
「でしたら?」
「雨の中、傘を一つだけ。傘は貴女が濡れてしまわない様に大きな傘を準備します。」
僕の言わんとする事が分からないらしい彼女は小首を傾げます。
「相合い傘…していただけますか?」
「相合い傘?」
「ええ。愛する貴女と一つ傘の下。
憂鬱な雨の日も好きになれそうな気がします。」
僕の申し出に彼女が優しく笑う。
「ええ。もちろん。」
そう言って小指を立てた彼女。
「指切り。」
「指切り…ですか?」
「そう。約束、破ったら…
「僕が針を1,000本、飲みます。」
貴女と二人で笑いあう時間。
次の雨の日が楽しみになりました。