第4章 海と合宿と性別
私は集合時間の十五分前に駅前に着くと、まだ誰もいなかった。
「どど、どうしよう…」
海に水着を持っていかない理由がない。でも私が持っているのは女用で、男用なんて無く困り果てていた。
気づかなかったのが悪かったのだ。自分の性別を偽っているのに海に行くなんて、ばらしに行くようなもので――。
「おはよう、望月君」
「んーはよ」
「おはようございます、鬼怒川先輩、由布院先輩。私の事は名前で読んで頂いていいですよ?」
結局今持っているのは女用水着のビキニタイプ。上手く言い訳出来ればバレずに海に入れるかな、という少しの可能性に賭けて。
「そう?…それにしても来るの早いね。まだ十分前だよ?」
「二人だってそうじゃないですか」
「まぁ一様年上だからね」
二人の私服は整っていて、着こなしがなっていた。