第3章 【テニスの王子様】 青学
私はこの春、青学の2年生に進級した。
現在夏季休業後半。今私がいるのは、テニス部部室。
その理由は……。
「ねぇ、優奈先輩。聞いてるの?」
「え、なに?」
「言ったろ、越前。コイツ聞いてねーよって」
あ……まずい……、というのを、直感的に悟った。
「じゃあ、優奈ちゃんは接客で決定ね。クスッ」
「え」
いや、本当にまずい。接客とか、私絶対にできない。
「優奈のメイド服、楽しみだにゃぁ〜」
強豪テニス部が一体なんの話をしてるんだ……って、私も問いたい。が、話題を振ったのも私なので、どうも何もない。
先日、全国大会を見事優勝した青学テニス部は、今はもう、夏季休業明けすぐに行われる、学園祭の準備に追われていた。
まあ、つまるところ、部室で学園祭の出し物についての話し合いをしているところで。
そう、学園祭の定番中の定番、執事&メイド喫茶をすることになった我らが男子テニス部。でも、おかしい。なんで男子テニス部なのにメイドが必要なのか。
女子はマネージャーの私1人だけなのだから、もう完全に裏方で良いと思う。Only執事喫茶でいきたい。もしくは、顔が綺麗な不二先輩あたりが女装メイドを……なんて目で見てたらにっこり笑顔で返された。うん、やめよう。
そんな私が、執事喫茶という至極真っ当な意見を提案したのがつい先ほど。意見が通ったわけでもないのに、提案したことに安心して、ぼーっとしていたのがいけなかった。それは、認める。
「よし。じゃあ、優奈にはメイドをやってもらうことに決定だ」
「そんな、大石先輩!」
「聞いていなかったお前に非がある。今回は諦めろ優奈」
「い、乾先輩まで……」
レギュラーメンバーのみんなの視線が私を射抜く。恐ろしいほどに性格無比なショットの如く。
「……分かりました」
確かに、今回はぼけっとしてた私に非がある。だから、仕方ない……か。
それに、きっとたった1人の残念なメイドより、かっこいい執事に人気は集まるはずだから、途中で、キッチンに戻されるでしょう、人手不足で。
なんていう軽い気持ちでOKしてしまった、メイドさん。
でもまさか、あんなことになるなんて……ね。