第10章 【名探偵コナン】 安室透
彼の愛車に揺られながら、私たちは先ほどの会話の続きをする。いつも、30分では足りないと思っていたから、その時間はとても有意義だった。
「優奈、今週1週間、お疲れ様です」
「透さんこそ、お疲れ様」
こうして、2人でお互いをねぎらう言葉をかけあえるのが、すごく嬉しい。端から見たら、普通のことだと思われるかもしれないけれど、私たちは普段は滅多にできないから。
「優奈。明日は、何か予定はありますか?」
「ううん……特に何もないよ。どうかした?」
「僕も、明日はお休みなので、久しぶりに、2人で何処か行きましょうか。」
「え……」
「勿論、強制はしないので、好きにしていいですけど」
「……一緒に、いられるの?」
日曜日でも、ポアロのバイトがあったり、本職の仕事があったり、毛利さんの事件に顔を出しに行ったり、組織の仕事に行ったり……とにかく、忙しそうにしている零さんからのお誘い。本当に久しぶりで、すぐに反応ができなかった。
「ええ。もし、優奈が嫌じゃなければ、一緒にいたいです」
「嫌なんかじゃない! 嬉しい!」
彼の事情を知っているからこそ、普段は一緒にいたくても、そんなことは口にしないから。
「良かった……どこか行きたいところはありますか?」
行きたいところはたくさんあった。いつか2人でいけたらなって、旅行誌は結構な頻度でチェックしていたから。だけど。
「透さんと一緒ならどこでもいい。一緒にいられるなら、それだけで幸せだから。」