第1章 君ノ背中。[☆]
その瞬間、「しまった」と思った。
ノートを覗き込むように乗り出した僕の数センチ先に、彼女の顔がある。
間近で見ると、物凄く整った顔立ちをしていると気付かされた。
大きめの目に、長いまつ毛。唇は柔らかそうで、思わず触りたくなるような――……
「っ!!」
『……?月島くん……?』
はっと我に返る。
何を考えてるんだろう。と、思わず頬を熱くする。
昼休みの教室で、周りに生徒がいないわけではなかった。のに、今空気が一瞬止まった気がした。
「ごめん、なんでもない」
そう言って、さっさっさっと模範解答を書いてしまう。その様子を、まじまじと見つめる彼女。
『おー……こう解くんだねぇ。ありがとう!助かりました!!』
ニッコリと笑ってそう言われた。
その笑顔も、なんだか眩しく見えたような気がして。
……その日から、心にモヤモヤができ始めた。