第12章 幸せ 【岩泉一】
「一、ご飯食べた?」
「いや、まだ食ってねぇ」
「簡単な物で良かったら作るけど?」
「頼むわ」
俺は荷物をソファの横に置き、ドサリと腰を下ろした。
「はぁ〜。疲れた……」
「お疲れ様。徹はどう?」
「相変わらずオーバーワークの癖が抜けてない」
「そうなんだぁ。でも一が居るから大丈夫だよね」
「さぁな」
着ていたジャージを脱ぎ、汗を吸収したTシャツを脱ぎ、タオルで体を拭く。
「あ、そう言えば、変人コンビは元気にしてる?」
「日向と影山か?あいつらはいつでも元気だな。あの及川が手を焼いてるんだし」
そう言って、頭の中で日向と影山のコンビネーションを思い出す。
「あの徹が?そっか。最近は顔出せてないから、今度一回見に行きたいな。一の働きぶりも見たいし」
そう言って希美が微笑んだ。
「………」
「一?どうかした?」
「いや、可愛いなと思って」
俺が言うと希美は顔を真っ赤にさせた。
「そ、そんなことない!!」
「俺が惚れた女だぜ?可愛くないわけないだろ」
「もう!一のバカ!」
そう言ってますます顔赤くさせる。
「なんだって?俺がバカ?そんな事言う奴にはこうだ!」
キッチンで料理を皿に盛り終えた希美に抱きつく。
「わ!?び、びっくりした」
驚いている希美の頬にキスをし、そして唇にもキスをする。始めは驚いていた希美もすぐに力を抜いて俺の首に手を回す。
何回も触れるだけのキスをして、希美の顔を見る。
「…ごめんなさいは?」
「…バカって言ってごめんなさい」
「よろしい」
そしてもう一度、キスをして腕に収めていた希美を離した。
「飯、食べても?」
「うん。はい、運んでね」
希美から料理の乗った皿を受け取りテーブルに運んだ。俺に続いて、希美がご飯をテーブルに置いた。
「いただきす」
「はーい」
俺がモグモグと飯を食べる様子を希美はじっと見ていた。