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プロポーズされてみませんか? 【短編集】

第10章 カッコイイこと言えないけど 【影山飛雄】


俺はバカだろ……。テメェの意地で大切なもん傷付けて、泣かせて。
「畜生……!」


あれから一週間。話そうと何回も話しかけたけど、フル無視。あの時のあいつもこんな気持ちだったんだなとか思う。
あんな最悪なまま別れるのは嫌だ。だから今、俺は空港に来ている。
何時間も椅子に座って、あいつが来るのを待つ。何本飛行機を見送っただろう、飲み物を買いに行こうと椅子から立ち上がったとき、春乃の姿を見た。俺は反射的に春乃の方へと向かう。
「春乃!」
予想以上の大きな声で名前を呼ぶ。急に名前を呼ばれてビックリしたのか、俺にビックリしたのか、目を丸くして信じられないと顔が言ってる。
「な…んで、ここに?」
「見送りに決まってんだろ!」
俺は春乃の手を引っ張って自分の胸の中に収める。
「俺、待ってるから。お前が帰ってくるの」
俺が告げると、春乃が背中に手を回す。
「うん。なるべく早く帰ってくる」
涙声になっている春乃の頭をそっと撫でる。
「春乃……。俺、この一週間考えた。俺はお前と一緒に居ていいのかとか、離れるべきなんじゃないかとか。でも、離れるなんて絶対に無理」
春乃は俺の腕の中で静かに耳を傾けている。
「かっこいいことなんて言えた試しねぇけど………」
そっと力を緩めて、春乃の顔が見えるようにする。
「春乃、日本に帰って来たら俺と………。結婚しよう」
「飛雄!!」
春乃が俺に抱きついて、泣き出した。
「それはYesと思っていいのか?」
「うん!」
目尻にたまった涙を指で拭ってやり、触れるだけのキスをする。
「春乃、行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
雲ひとつない空を真っ白な飛行機の横切って行った。


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