第4章 家族になろう 【黒尾鉄郎】
「その事を、忘れんな」
俺は春乃の手を包み、その瞳を見つめる。
「春乃、俺と家族になろう?お前と結婚したい」
その言葉に、春乃の目に溜まった涙がいっきに溢れる。その大粒の涙を拭ってやる。
「本当に私でいいの? 手術しても生きて帰ってこれるかわからないのに……」
「だからこそ、俺はお前と結婚したい。後悔したくないんだ」
「私は、手術が成功しても、多分子供は産めない。それでも鉄郎が良いと言ってくれるなら、私はあなたの妻になりたい」
そう言って、今までで一番綺麗な笑顔を見せる。
「鉄郎、私手術受けてみる。後悔しないように。だから応援してね」
「ああ、もちろんだ」
そう言って、俺は春乃にキスをする。そんな俺たちの後ろを夕焼けが包んだ。