第3章 私はジュリエット
「 えーっと?
名前は・・・・・ひ、ひぃー――――
「姫唄 咲輝(ひめうた さき)です。」
「あ、そうそう。姫唄咲輝だ。
みんなー仲良くすんだぞー?」
咲輝が一礼すると、クラス中が騒ぎ始めた。
男子はもちろん女子まで、
彼女のことについて話し合っていた。
彼女と仲良くできるだろうか。
空は、そんなこと出来そうにもなかった。
「…咲輝ちゃんだって…。
可愛い名前だね…駿。」
口元を無理矢理引きつらせながら
空は精一杯の笑顔で駿に囁きかける。
だが、駿には空の言葉なんか
届いていなかった。
先程と変わらず、じっと咲輝のことを見ている。
頬をほんのり赤く染め、いままで
私に一度も見せなかった優しい目で。
いや、一度だけ見せてくれたことがあった。
それは、もう昔のことだが。
空はギュウっと胸が締め付けられた。
さっきまでは嫌そうな顔を浮かべていた駿を、
一瞬にして私から突き放すことができたのだ。
空はぐっと下唇を噛み、俯いた。