第6章 お前を守るのは(前編) @ 国見英×β
はぁっ…はぁっ…
ひたすらに走り続ける。
抑制剤は飲んだはずなのに。
どうしてあの人は遙の匂いを感じ取って。
ひたすらに追い掛けてくるのだろう。
あの人はαなのだろうか。
スーツを着た中年男性が、人気のない道に遙を追い込んだ。
きっと、襲われる。
逃げ場がない。
「…もう逃げられないな、お嬢ちゃん?」
そう言って遙の腕を掴む。
『…やめてっ…離して…!』
「えへへへ…お前Ωなんだな…残念だったな、Ωは性処理のために存在する人種なんだぜ…その身をもって実感しな!!」
「…何してるの、遙。」
毎日聞いているこの声。