第2章 嵐の夜の訪問者
タオルを用意する間にも「うわっ!」とか、「ぐぁっ」とか悲鳴が聞こえた。
(大丈夫かしら?)
むしろ少年より男の方が心配になってくる。
戻ってみれば腰を抑えて涙目で床の上に座り込んでいる。
「大丈夫?」
「ああ、なんともない」
「そうは見えないけど」
「ドジだからな。気にするな」
(ドジの範囲を超えてる気がするんだけど)
メイサがタオルを取りに行っている短時間で少なくとも3回はコケるなりどこかにぶつかったりしているはずだ。
「あなたもバスルームで体を拭いてきたら?廊下にでてすぐだから。風邪引くわよ」
「悪いな。見ず知らずの俺たちなんかに」
「それだけドジなら何も出来なさそうだから安心したの」
「それもそうだな」
そう言ってニカッと笑うとバスルームへ向かった。
廊下に出てすぐにゴン!と凄い音がしたので、もう笑うしかなかった。
「アナタも大変ね」
意識のない少年に声を掛けながらビショ濡れの布を取った。
着替えはないが、濡れた服を着ているよりはマシだろうと上着を脱がしかけて目を見張った。
少年の胸や腕、いたるところに白い痣があったからだ。
目深に被った帽子を取れば顔にも白い痣がある。
それがなんなのかメイサは知っている。