第3章 一つ合宿所の屋根の下
第3章 『一つ合宿所の屋根の下』
* * *
「伊鶴ちゃん、ドリンク運ぶの手伝ってもらって良い?」
「あ、はい!分かりました!」
5月2日、合宿当日の放課後。部員の皆は体育館で忙しなく練習に励んでいる。マネージャーである私と潔子先輩も、通常の仕事と合宿の準備に追われていた。
「ごめんね。ありがと伊鶴ちゃん」
「いえ!潔子先輩の為なら!」
「フフフッ!伊鶴ちゃん頼もしいなー」
「何でも言ってくださいね!」
潔子先輩の眩い笑顔に釣られ、私も自然と笑顔になる。初めて会った時の第一印象は、冷静沈着な人で、あまり他人に関心を示すタイプなのかと思ったが、全くの予想外だった。
『は、初めまして。瀬戸伊鶴です!よろしく
お願いします!』
『伊鶴ちゃんね?私は清水潔子。これからよろしくね』
『は、はい!よろしくお願いします!』
と、聖母の様な笑顔で迎えてくれた。あの瞬間私の心臓はブチ抜かれたのだった。しかし、さらに私をキュン死にさせる出来事が起こった。それは、東峰先輩のクラスを尋ねた時のこと。
『教えてくれて、どうもありがとうございます!』
『ううん、どういたしまして。あ、伊鶴ちゃん』
『はい?』
『私のこと、これからは下の名前で呼んでね?』
『! はい!潔子先輩!』
『ふふっ、じゃあね』