第2章 オレの日常
はらはらと舞い降りる花びらが一つ。
の髪に留まる。
「オレの日常は…誰に気付かれるでもなく、静かに過ごす日々で。
自己主張しなくても気づいて貰える周りの存在感が何と無く鬱陶しくて。
心の何処かで、誰かの意識に留まる事を願っていたから…ラノベの中に
存在する有り得るはずのない“非日常”に現実逃避していたのかもしれねぇ。」
桜の花びらをそっと摘み落としてから、の髪に指を絡めた。
その髪がサラサラ指先を滑り落ちていく。
「、訂正するわ。
お前の告白はオレの“非日常”だったけど、お前の存在は“日常”であって欲しい。
お前の恥ずかしがる仕草も、優しい笑顔も、オレは目が離せない。
その指先が触れるのはオレだけであって欲しいし、
その声が紡ぐ言葉も、唇もオレだけのモンであってほしい。オレもお前が好きだ。」
の瞳から一筋の雫が溢れると、
それに誘われるように花びらが一つゆらゆらと舞い降りた。
その花びらは二人の距離を縮めるかのようにの唇に留まった。
ほんのり紅潮する頬に瞳は揺れていて。
唇に留まった花びらをそっと拭うようにして触れた指先は、
心に甘い痺れを残した。
そのまま頬に手を添えると静かに閉じられた瞳。
ふわっと重ねただけの唇から伝わる体温。
初めて交わしたキスを
オレは桜の花びらを見るたびに思い出すだろう。