第2章 オレの日常
誰も居ない小さな小さな公園。
そこには桜の樹が申し訳なさそうに隅っこにぽつんと立っている。
立派とは言えない…が静かに過ごせるんだから別にいい。
桜の樹に近付けば、時折風に揺られてはらはらと花びらが舞い降りてくる。
その花びらをまん丸な目で追いかけるの姿は可愛らしいの一言。
「ねぇ千尋。お弁当…作ってきたんだけど、食べれそう?」
「あー…食うけど、ちょっと休みたい。」
そう言ってオレは桜の樹の下へ腰を下ろした。
ちょうど芝生のようになっていてフワっとした感触がある。
いつまでも突っ立ったままのの手を引いて、
隣に座るように促す。
僅かに頬を紅潮させて腰を下ろしたのを確認すると、
オレはの太腿の上に頭を下ろした。
「ちっ…千尋!!」
“千尋”と呼ぶの声が上擦った。
「疲れた彼氏サマを労われよ。」
目を閉じたまま言えばの指先が前髪を撫ぜる。
柔らかい風が頬を撫でて、
優しい指先を感じながらオレはあの日のコトを思い出していた。
あの日も桜が舞い散る時期だった。