第2章 オレの日常
屋上へ足繁く通うこと数年…
いや、高校生活2年間。
授業がある日はほぼ毎日来ている。
そして最後の一年も通うだろう。
誰にも邪魔されることの無いこの空間でオレはラノベを読んでいる。
この時期の陽射しは心地よくて、時折吹き抜ける風はまだ冷たいが
一年を通してオレはこの季節が一番好きだ。
滅多に人が来る事は無いこの場所はオレのお気に入り。
人気のない静かな場所は意外に少ない。
手元のラノベに目を落とし、時折辺りの景色に目を向ける。
それを繰り返しているうちに何だか眠たくなってきた。
静かに目を閉じる。
(そろそろ…か?)
瞼の裏にたった一人の顔を思い浮かべていた。
「千尋?」
そう言ってオレの前髪を撫ぜるコイツ。
騒がしいヤツにはあからさまな拒否反応をしてしまうオレが唯一
平気なヤツ。
「寝てるの?」
目を閉じていても感じていた太陽の光が遮られ、ソイツがオレの顔を覗き込んでいるのが判った。
相変わらず髪を梳かすように撫ぜる指先をオレは逃すまいと掴んだ。
オレに突然手を掴まれたソイツは驚きで目を大きく見開いている。
「何。」
「あ…寝てると思った。」
「そう。寝てた…けど、誰かさんが邪魔したんだろ。」
「ごめん。」
「じゃあ、キスさせて。」
「え…あっ…そっそれはっ…。」