第15章 【清水の差し金、義兄の悪乗り】
「何でっ。」
「可愛いからもうちょっと愛でたい。」
「また兄さんがおかしなこと言うてる。」
「へえ。」
力は微笑み、油断している義妹の唇に自分の唇を重ねた。
「じゃあこんなことする仲になってさっきまで俺の言うことを聞いてたお前はどうなの。」
「いじわるー。」
美沙の語尾が伸びる。甘えたモードが進行してきた証拠だ。
「兄さんがまたいじわるやー。自分かて私がおらんかったらどうなんよー。」
「お前もなかなか知恵をつけてきたな。」
「あっ。」
首筋に力の唇を当てられた美沙がびくりとする。力はにっこり笑って更に義妹を愛で続けた。
次の日の事だ。
「縁下、」
部活にてマネージャーの清水が言った。
「写真ありがとう、やっぱり美沙ちゃんに似合うわね。」
「あ、いや、どうも。」
力は笑いながら返したが内心では少し後ろめたい。依頼ついでに悪ノリしたのは明白だからだ。その間にも写真て何だと思った部員達が清水のそばに寄ってくる。
「わぁ、美沙さん可愛いー。」
谷地が純粋に目をキラキラさせて言った。
「すっげえ、美沙がドレスみたいなの着てるっ。」
「女の子って化けるって言うけど美沙さんもそうなのかな。」
テンションの高い日向に不思議そうにする山口も加わる。影山はちらと清水のスマホの画面を見てうっと唸ったがどうやら意外な美沙の姿を見て驚いたらしい。西谷と田中のハイテンションコンビも何だこれコスプレか、すげーと声を上げ、東峰も可愛いなぁと特に下心もなく感心する。
だがしかしやはり何となく察した奴らもいた。
「堕ちましたね。」
まずは月島に言われて力はギクリとした。
「ほんっと妹萌えだなぁ。」
菅原も言う。
「いけねーんだー、頼まれたのにかこつけてー。」
木下が言い、成田が続く。
「てゆーか早いとこ指輪買ってやれー。」
更には澤村が力の肩をポンと叩いて言った。
「縁下、」
「何でしょう、大地さん。」
「結婚祝いも出産祝いも送るからな、ちゃんと知らせろよ。」
「ちょっ、大地さんっ。」
まさかの主将からとんでもな冗談を言われて力は慌てる羽目になった。
「勘弁してくださああああああああいっ。」
第二体育館に珍しく縁下力の絶叫が響いた。
次章に続く