第63章 【強制送迎宣言あるいは混沌】
ところが清水はそう、と首を傾げる。
「こないだの合宿の時他校の人も美沙ちゃんの話で盛り上がって縁下がいっぱい相手してた。」
「チラッと兄さんから話聞きましたけどそれはリエたんがいらん事言うたとか黒尾さんがいらん事言うたとか山本さんが天使がどうたらと訳分からん事言うたとかで夜久さんが怒ってどついた挙句に赤葦さんが一時(いちじ)の気の迷いで興味示したとかそんなんだけちゃいますのん。」
「そーっすよ潔子さんっ、縁下妹はキャラが濃いんで面白がられてるだけっす。ま、今日は他の目もちったぁひいたみたいっすけど。」
「せやせや。人の目ひいたどうかは知らんけど。」
「美沙さん、自分で言っちゃダメーっ。」
わいわい言う後輩達に清水は珍しくクスッと笑った。それを見た田中が谷地の横で昇天しそうな勢いである。
「だって」
清水は言った。
「あの及川さんがうちまで突撃して縁下が嫌がってるのも知ってるのにまだ美沙ちゃんの事追っかけ回してるもの。」
その及川が声をかけたという美人に言われても美沙はうーんと唸るしかない。そこへ駄目押しするように清水は言った。
「美沙ちゃんは可愛いわよ。縁下が一番それ知ってる。」
美沙は義兄の方をチラと見やってはい、と返事をした。義兄の力はまだ青城相手にやり取りをしていて今はニッコリ笑いながら及川に美沙を無断抱っこした件を問い詰めている。
これだけでもたいがい混沌としているのにまだ終わらない。
次章に続く