第62章 【強制拘束宣言あるいは夏祭りにて】
「お前らしいというかなんと言うか。」
力が苦笑するが美沙はやりたいもんと今回は譲らなかった。
そういう訳でこっちの組はまずスーパーボール掬いに興じることとなった。
「ていっ。」
「お、縁下妹何気にやるな。」
「金魚みたいに動かないからかな。」
「美沙さん、結構おっきいのすくったね。」
「何かうまいこといった。」
「あ、この柄可愛い。」
「ホンマや、それええですね清水先輩。」
「潔子さん、掬う姿もお美しい。」
「お前にシスコン呼ばわりされてる俺の立場は何なんだろうな。」
そんな高校生の会話を一部周りが面白がっているが美沙含め彼らは気づいていない。
「あう、私のポイもうアカン。」
やがて美沙が限界になり、清水と谷地もキリがついたところで次に行く事になった。今度は田中がたこ焼きの屋台に反応する。
「お、たこ焼き。」
「田中、もう何か食うのか。」
「腹減ってしょーがねえんだよ。」
「私もいただこうかな。」
「あ、私も。」
「結構量ありそうだから分けっこしようか。」
「おい縁下妹はいーのか、一応関西系だろ、お前。」
「買う。」
「へえ、たまご焼きじゃないのにつられるなんて珍しいな。」
「は、たまご焼き。」
「今のは明石焼の事だよ、田中。」
「美沙さんはおばあさんが瀬戸内海系ですもんねっ。」
「奥が深いわね。」
義兄や田中達がそんな会話をしている間、当の美沙は祖母が存命時には食べさせてもらえなかったものを食(しょく)せるので誰が見てもわかるくらい喜んでいる。
「アチ、アチ。」
「美沙さん、気をつけて。」
「う、うん。」
「火傷するなよ。ところでお前、それ食べ切れるのか。」
「多分無理やから兄さん半分こ。」
「親父さんかっ。」
「縁下は美沙ちゃんがよっぽど可愛いのね。」
「そ、そーっすね、潔子さんっ。」
「あ、皆さんあっちのベンチで食べましょう。」
そうしてしばし谷地が見つけたベンチで一行はたこ焼きを食していた。美沙はアチアチ言いながらもご満悦でいつも日向にまで固いと言われる顔は自然とほころんでいる。