第62章 【強制拘束宣言あるいは夏祭りにて】
苦笑する成田の横で木下が勝手に念の為の確認じゃねーのと言い出す。
「だって現時点で縁下がこれだぞ、自覚なかったら流石におかしいって。」
美沙は木下先輩何を阿呆なと言いかけたが木下がさりげなく指差した先に義兄に繋がれた手があったのでショボーンとなる。試しにそっと手を動かそうとしてみたが菅原や田中らと話しながらも力はきっちり手を握りなおしてきた。逃げられない。更に残りの面子も到着する。
「ちわーっすって、あーっ。」
日向の声がした。最後のあーっで嫌な予感しかせえへんと美沙は思う。
「美沙が浴衣着てるっ。しかも何か綺麗にしてもらってるっ。縁下さん、美沙どーしたんですかっ。」
「こらっ、そないなことを兄さんに聞く人があるかいなっ。」
「滅多にないからこんな時くらいはね。」
「兄さんも普通に答えんといてっ。」
「てかままコ、お前スマホケースどうしたんだ。」
「ああ影山お疲れさん、あんたはあんたでピンポイントやな。ホンマは肩掛けしたかったけど兄さんに帯もあるのにどないすんねんって止められた。今この籠バッグに入っとう。」
「ふーん、馬子(まご)にも衣装とはよく言ったもんだね。」
「あ、月島に山口。」
「ツッキーったら普通にいい感じって言ったげればいいのに。でも美沙さんの浴衣姿は確かに新鮮だね。」
「とりあえず山口うるさい。」
「ごめん、ツッキー。」
「こいつらホンマ名コンビやな。」
「あはは、そうだね美沙さん。」
ここで澤村がよーしと声をかけていつかのように美沙を含めた人数を確認、15人はぞろぞろと歩き出した。なかなか壮観な図かもしれない。
夏祭り会場に着くと既に多くの人が集まっていた。高校生15人が一緒に動くのは少し骨が折れそうである。
「わかっちゃいたけど結構な人だな。大地、どうする。」
菅原に言われて澤村はそうだなと呟く。
「二手以上に分かれた方がいい気はするんだが、さてどう分けたもんかな。」
「とりあえず女子組は分けてさ、」
澤村と菅原が考えた挙句結局3つに分かれ、こうなった。
1組目 澤村、東峰、西谷、影山、日向
2組目 菅原、成田、木下、山口、月島
3組目 縁下力、田中、清水、谷地、縁下美沙