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【ハイキュー】エンノシタイモウト第二部

第56章 【落ちる未遂】


「ごめん、」

菅原が呟いてそっと美沙を離す。鬼気迫る表情は義兄にちょっとだけ似ているいつもの穏やかな物に戻っていた。

「ついムキになった。それに俺、ほとんど見てたのに何も出来なくて。」
「別に私は」
「間に合わなかったのかなって思ったけどそうじゃないよな。巻き込まないようにしてくれたんだろ。」
「だって菅原さん巻き込んで万一怪我させたら兄さんにも谷地さんにも他のみんなにも顔向けでけへん。男バレはただでさえ人少ないのに。」
「ホント、そういう事を当たり前に言えるんだな。」

菅原は笑うがその表情は義兄の力が半分泣きそうな時に似ていて美沙は困ってしまう。菅原はとりあえず、と呟き

「頭は打ってないな。」

確認をしてきた。

「今回は。」
「前は打ったのか。」
「頭ちゅうかおでこに傷が。」
「絆創膏つけてたな、そういや。腕も打ったみたいだけど。」
「角で打ってまいました。」
「念のため保健室行っといで。」

美沙は片手で涙をぬぐいながらうっかりうーと唸ってしまった。揉めて保健室の世話になるのはこれで3度目だ、目立つ苗字も手伝い保健教諭に覚えられてそうで気がひける。

「縁下に絶対聞かれるよ、行ってないなんて事知ったら何て言うかな。」
「ふぎゃああああっ。」

菅原はハハハと笑った。

「縁下効果絶大だな。」

美沙はやられたと思いつつも菅原に礼を言って歩き出す。しかし、

「じゃあ行こうか。」
「へ。」

いきなり言われて美沙は間抜けな声を上げた。

「菅原先輩、ちょお待ってください。」
「ほらほら歩いて歩いて。」
「ちゃんと行くからっ、ごまかさへんからっ。」

それにと美沙は内心思う。さっきの子みたいな感じで自分が排球部関係者と親しいのをよく思わない手合いに見られたら厄介な気がする。菅原がモテることを知らない美沙ではない。

「途中からとはいえ見てた奴が一緒にいた方がいいだろ。ほっとくと美沙ちゃんは先生にろくに説明しないまま変な勘ぐりされかねないし。」

色々バレバレである。義兄の力は一体部活中に何を話しているのか。やはり目をそらして戸惑っている様子を見せると菅原はああそっかとポンっと手を叩いた。
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