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【ハイキュー】エンノシタイモウト第二部

第53章 【眠り姫に差し入れを】


そもそものところで我慢してしまったのがまずかったのか美沙の風邪は長引いた。殆(ほとん)ど寝てばかり、しかし幸いにも少しずつは快方に向かい僅(わず)かながら食欲も出てきた。義兄である力は家庭内面会謝絶状態でろくに義妹の顔が見れず落ち着かない心持ちであるがとりあえずはいつも通り学校に行きいつも通り部活に勤(いそ)しんでいた。

そんなこんなのその日の放課後、男子排球部の部室にて縁下、と声をかけられた。木下である。

「これ美沙さんに。」

言って木下が差し出したのは少年漫画雑誌である。

「え、あ、ありがとう木下。でもこれお前が買った奴じゃ」
「表紙の漫画美沙さん好きだろ。」
「そうだけどでも」

ためらう力に西谷が力っと声を上げる。

「気にすんなっ。俺らん中で読みてえ奴は全員回し読み済みだっ。それに寝てばっかじゃ美沙もつまんねーだろがよっ。」
「とゆー訳で。」

木下はニッと笑って力の手に雑誌を押し付ける。

「ホントありがとう、美沙の奴喜ぶよ。」
「返さなくてもいいってちゃんと言っといてくれよ。うちのクラスに突撃されたら俺笑っちまうから。」
「了解。」

今度は谷地が声を上げる。

「縁下さんっ、これも美沙さんにっ。」
「谷地さん、これ。」

渡されたのはゼリー飲料である。

「美沙さんまだあんまり食べられないって事なので。」
「ありがとう、渡しておくね。」

そうかと思えば今度は清水である。

「これも美沙ちゃんに渡したげて。」
「清水先輩、このフィギュア。」
「友達がガチャ引いてダブったのをもらった。でも私特にいらないから。」
「ありがとうございます、あいつキノコキャラ好きなんできっと喜びます。」
「くっ、縁下妹羨ましいじゃねーか。」
「お前が美沙羨ましがってどうすんだ、田中。」

阿呆な事を抜かす田中に力はすかさず突っ込み、突っ込まれた田中はじょーだんだってとバツの悪そうな笑い方をする。

「そーいや縁下妹が倒れたっつったらよ、うちのねーちゃんも心配してたぞ。」
「冴子さんが。」
「治ったら抱っこしに行くってよ。あ、やっちゃんも込みな。」
「ええっ私もっ。」
「あーうん、気持ちだけ受け取っておく。」
「美沙さん愛されてますねぇ。」
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